遺言・相続マンガ
「一度書いたから安心」は大間違い?昔作成した遺言書を放置するリスクと正しい書き直し方
漫画で読む「ブショーくんのやさしい遺言相談」

事例概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 都道府県 | 大阪府 |
| 仮年齢・性別 | 72歳・女性 |
| 被相続人 | 夫(すでに死亡) |
| 生前・死後 | 生前相談 |
| 相談種別 | 遺言書の作成・見直し |
| 家族構成 | 相談者本人、長男、孫(数年前に亡くなった長女の娘)の3名 |
財産状況
| 財産種別 | 詳細 | 評価額(推定) |
|---|---|---|
| 預貯金 | 金融機関口座 | 2,000万円 |
| 不動産 | 自宅土地・建物 | 1,500万円 |
| 財産総額 | 3,500万円 |
相談内容
約30年前に「長男と長女に財産を半々で相続させる」という自筆の遺言書を作成しました。しかし数年前、長女が私より先に亡くなってしまいました。「昔書いた遺言書があるから大丈夫」と思って放置していたのですが、このまま長女の娘(孫)へ無事に財産が引き継がれるのでしょうか?





回答
長女が先に死亡している場合、過去に作成した遺言書の効力は当然にはお孫さん(長女の娘)へ及びません。遺言書を書き直さずに放置しておくと、長女に渡すはずだった財産について遺言が無効となり、長男とお孫さんの間で改めて「遺産分割協議(話し合い)」を行わなければならなくなります。トラブルを避けるためには、古い遺言書を明確に撤回して新しい遺言書を作成するか、「予備的遺言」を活用することが必要です。
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解説
登場人物

知ったかぶりをするが、だいたい途中で間違う人

バツイチで独り暮らしの行政書士。冷静沈着な人物だが時おり感情が高ぶることもある。
昔書いた遺言書は永久保証?

先生、遺言書って一度作ったら永久保証ですよね?

どこかの永久保証付きのお鍋じゃないんですから。

だって遺言書でしょう? 人生の最終決定版ですよね。

最終決定版ではありますが、まだ生きている間は何度でも書き直せます。

えっ!? 遺言書って作った瞬間に金庫へ封印されて、二度と変更できないんじゃないんですか?

そんな呪いのアイテムみたいなものではありません。
遺言者に判断能力がある限り、遺言は何度でも変更・撤回できます。
民法でも「遺言撤回の自由」が認められています。

じゃあ公証役場で立派な公正証書遺言を作った後に、自宅で書いた遺言書で変更することも可能?

可能です。
複数の遺言が存在し、内容が重複する部分は、法律上原則として新しい日付の遺言が優先されます。

なるほど!
パソコンのファイルを「上書き保存」する感じですね!

それは割と近いですね。
ただし保存したまま30年間アップデートしなかったらどうなりますか?

動かなくなります。

遺言も同じです。
家族が変わったのに放置すると?

でも遺言書なんて一回書いたら役目は終わりじゃないですか?

そうとも限りません。
家族構成や財産は年月とともに変わります。

例えば?

不動産を売却したり、相続人が先に亡くなったり、家族関係が変化したりですね。

ああ、人生のほうが遺言書の予定表を守ってくれないんですね。

そのとおりです。
遺言書はその時点の状況を前提に作られています。
前提が変われば内容も見直す必要があります。
長女が先に亡くなったら孫が自動的にもらえる?

今回の相談は、
「長男と長女に半分ずつ相続させる」
という遺言を書いていたけれど、長女が先に亡くなったケースですよね。
だったら答えは簡単です。
お孫さんが自動的にもらえます!

自信満々ですが不正解です。

えっ!?
代襲相続がありますよ?
法律番組で見ましたよ!

確かに代襲相続という制度はあります。
しかし、それは「遺言がない場合」の法定相続の話です。

ほうほう。
では「長女へ相続させる」と書いた遺言の場合は?

長女が遺言者より先に亡くなっていると、その部分の遺言は原則として効力を失います。

じゃあ孫にバトンタッチされるわけではないんですか?

自動的には引き継がれません。

代襲相続、出番なし!

その結果、長女へ渡す予定だった財産については、長男とお孫さんで改めて遺産分割協議を行うことになります。

争わないために遺言を書いたのに、結局話し合いになるんですか。

そうです。
だからこそ放置が危険なのです。
複数の遺言書が出てきたら?

じゃあ10年ごとに遺言を書き換えていたら、遺言書が5冊くらい出てくることもありますよね?

ないとは言い切れません。

その場合は多数決ですか?

遺言書に選挙制度はありません。

じゃんけん?

それでもありません。
原則として日付が新しい遺言が優先されます。

最新版が勝つわけですね。

ただし、古い遺言の内容でも新しい遺言と矛盾しない部分は効力が残ることがあります。
そのため複数の遺言が存在すると相続手続が複雑になることがあります。

なるほど。
スマホの写真フォルダみたいに「最終版」「最終版2」「本当に最終版」「絶対最終版」が増えると大変なんですね。

まさにその状態です。
正しい書き直し方は?

では遺言を書き直す時のコツはありますか?

新しい遺言書に、
「本遺言作成以前の遺言をすべて撤回する」
という文言を入れることです。

つまり「過去作は全部なかったことにします宣言」ですね。

言い方はともかく、その理解で結構です。

古い遺言書は捨ててもいいんですか?

自筆証書遺言であれば破棄による撤回も考えられますが、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されています。
そのため新しい遺言で撤回を明記する方法が確実です。
さらに安心な「予備的遺言」

でも先生。
せっかく書き直しても、その相続人がまた先に亡くなったらどうするんですか?
イタチごっこじゃないですか。

そこで活躍するのが「予備的遺言」です。

予備軍みたいな名前ですね。

例えば、
「長女に相続させる。もし長女が先に亡くなった場合は長女の娘に相続させる」
とあらかじめ定めておく方法です。

おお!
第一希望と第二希望を書いておくわけですね。

そのイメージです。
万一の場合でも遺言者の意思を実現しやすくなります。

これは便利ですね。
人生には予期せぬことがありますからね。

だから遺言書は「作ったら終わり」ではなく「定期的に見直す」ことが重要なのです。
まとめ

今日の結論です。
遺言書は一度書いたら永久保存版!

違います。

えーと、
遺言書は定期点検が必要!

正解です。

家族構成や財産が変わったら見直す。
相続人が先に亡くなったら放置しない。
必要なら予備的遺言も活用する。

そのとおりです。

つまり遺言書も健康診断と同じですね。
異常がなくても定期検査。

その例えは非常に分かりやすいですね。

珍しく褒められた!
では皆さんも「30年前の遺言だから熟成されて価値が上がる」とは考えず、定期的に見直しましょう!

遺言書はワインやウイスキーとは違います。そこを間違ってはいけません。



